September 05, 2005

2ちゃんねるでなぜ罵詈雑言が飛び交うのか分かった。
下の本で読んだ生かじりの知識なのだけれど、レヴィナスは他者の顔が「他者」を感じさせると書いているらしい。
ところがネット上では顔が現われない。顔どころかその人の姿も見えないし声さえも聞けない。しかも匿名掲示板では名前すら現われない。現われるのは無表情な文字だけだ。それはほとんど他者の存在――超越的なものを感じさせない。そこには他者からの呼びかけがない。だから、なのではないか。

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May 04, 2005

アリバイ講義

アリバイ講義やります。
alibi-image
被害者が0時に0地点で殺され、犯人に「t時、p地点にいた」というアリバイが成立しているとします。それを図で表したのが左のものです。トリックの分類をします。




(1)犯人は本当にt時、p地点にいた。
(1-A)犯行時刻に錯覚があった。
alibi1aa
alibi1ab
犯行時刻が違ってくると、光円錐全体が上か下に移動することになります。黒い点を内部に含むように移動してやればよいのです。左の図は犯行時刻が0時よりも後だった場合、右は0時より前だった場合です。右の場合は、犯人は犯行を終えてから、t地点に行き、アリバイ工作をしたことになります。


(1-B)犯行現場に錯覚があった。
alibi1b
空間軸方向に光円錐を平行移動しても、黒い点は含まれます。つまり犯行現場が違っていた場合です。
補足ですが、犯行時刻と犯行現場の両方を錯覚させることによっても((1-A)と(1-B)の組み合わせ)、犯行は可能になるでしょう。とにかく光円錐の中に黒い点を含ませればよいのです。



(1-C)限界速度に間違いがあった(ルートに盲点があった)。
alibi1c
犯人が確かに黒い点のところにいながら、現場に間に合うことができた場合です。その場合はp地点からo地点を、t時からo時までの時間で移動できたのだから、限界速度が間違っていたことになります。ルートに盲点があったり、通常考えられない移動手段を使ったのでしょう。



(1-D)遠隔殺人。
犯人は確かにt時、p地点にいたし、光円錐で表された時間の壁も間違っていない場合は、遠隔殺人のトリックを使ったことになります。
(1-E)誘導自殺。
これは僕は例を知らないので、なんとも言えませんが……。『マジックミラー』によると、自殺させるという手もあるらしいです。




(2)犯人はt時、p地点にいなかった。
(2-A)証人に錯覚させる。
alibi
(2-A-a)時間を錯覚させる。(2-A-b)場所を錯覚させる。(2-A-c)人物を錯覚させる。
の3つの方法です。とにかく時間の壁の内側にいたのに、外側にいたと思わせればよいのです。犯人が本当にいたのは大きな黒い点ではなく、小さな黒い点だった。人物を錯覚させる場合はどこにいてもよいでしょう。



(2-B)証拠物件を偽造する。
証拠物件を偽造して時間の壁の外にいたと思わせた場合です。
偽造されていない証拠物件によって捜査陣を錯覚させるというトリックもあります。
(2-C)証人が嘘をついた。
証人が嘘をつけば、簡単にアリバイは成立しますね。

以上です。ほとんど『マジックミラー』のアリバイ講義と同じ気がしますが……、まあよいでしょう。この図によって見えてくるものもあります。

上の例では「犯行時刻に間に合わない」タイプのアリバイを例にとっています。ですが、ずばり犯行時刻に、別の場所にいたアリバイがある場合にも、上の分類は通用します。(1-C)のトリックが使いにくくなる程度です。

多くの場合、犯行推定時刻には幅があります。ですので正確に光円錐を描けばこうなります。
alibi3

犯人が(2-A-a)証人に場所を錯覚させるトリックを使い、犯行時刻に間に合わないというアリバイを得たとします。しかし何らかの事情によって犯行推定時刻が大きく幅をとって採用されると、「アリバイトリックを使ったのにアリバイが成立しない」という皮肉な事態も起こりうるでしょう。

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April 30, 2005

密室→アリバイ(其の二)または「アリバイ講義」

続きです。
alibi

『キマイラ…』に載っている図を真似して描きました。
縦軸は時間軸、横軸は空間軸です。被害者が時刻Oに地点Oで殺されたとして、それを原点Oとします。時間は下のほうに流れているとします。
変な図形みたいなのが「時間の壁」です。
Dがある時刻ある場所にいたということを黒い大きな点で表しています。この場合、Dにはアリバイが成立します。DとOを直線で結んで、「充分に間に合う」ということはできません。その場合は、「限界速度」を超えた、ということになってしまいます。時間の壁を表す線の傾きより緩やかな傾きで移動できないということが限界速度なのですから。
なので、DがO地点に到達するのは早く見積もっても、時間の壁を表す線と平行な、Dから延びた直線が時間軸と交わる点になります。つまり犯行時刻に間に合わないわけです。
それでもDが犯人とするならば、何らかのアリバイトリックが使われていることになります。
で、昨日やった分類ですが、あれは相応しくないことがわかりました。人間には間違いがつきものです。上の図と考え合わせると、もっと適切な分類法が出てきます。
(1)アリバイは本物だった。
(2)アリバイはにせものだった。
Dが本当に黒い点のところにいたら、「本物」。Dが黒い点にいたということが嘘だったら、「にせもの」と表現しています。以下のものは完全に我流の「アリバイ講義」ではないかと思います(『キマイラ…』に着眼点を負っていますが)。細かく見ていきます。
(1)の場合は、Dがある時ある場所にいたということが事実なのですから、時間の壁そのものが間違っていたことになります。

中途半端ですが、少し疲れましたので、続きはまた。

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April 29, 2005

密室→アリバイ(其の一)

A、犯行当時、犯人は密室の中にいた。
 a、密室の外から密室を構成する。
  1、ピンと糸のトリック。
  2、鍵を部屋の中に戻すトリック。
  3、その他の機械的方法。
  4、被害者自身が防衛のためなどでみずから錠を下ろした場合。

 b、犯人は発見当時、密室の中にいた。
  1、密室に隠れていた。
   い、被害者に化けて死んだ振りをしていた。
   ろ、隠れ場所の盲点。
   は、変装の活用。
  2、密室の中にいたが凶器を所持していないなどの理由で嫌疑を免れていた。

 c、秘密の抜け道。(「ユダのドア」。煙突から脱出したり、ドアや窓をそのまま取り外すやつ)

 d、密室ではなかった。(発見時にこっそり錠を下ろしたり、鍵をそっと被害者のポケットに入れるタイプ)

 e、犯行時刻の錯覚によるトリック。(密室が閉ざされていた時間に殺されたと思われたが実際は違った)
  1、密室が破られてから殺す。
   い、早業殺人
   ろ、被害者が死んだふりをしていた

  2、密室になる前に殺す。

B、犯行当時、犯人は密室の外にいた。
 a、遠隔殺人。(犯人は密室の外から、中にいる被害者を殺した。このタイプはかなり多い)(銃や矢では、ユダの窓が問題になる場合、弾道が問題になる場合、がある)

 b、被害者も密室の外にいた。犯人は、密室の外で被害者を殺害し、その死体を何らかの方法で密室の中に運び込む。または部屋の外で瀕死の重傷を負った被害者が自ら部屋に入り、内側から施錠する。

C、事故、自殺。
 a、偶然によって殺人に見える事故。

 b、自殺。
  1、自殺者みずから自殺を殺人に偽装する。
  2、発見者が自殺を殺人に偽装する。

密室トリックとアリバイトリックに互換性があるなら、新しいトリックを作ることも可能ではないか、という企画の続きです。
僕の密室講義は上のものです。なかなかよくできているでしょ。
これをアリバイトリックに変換します。
大枠の分類には乱歩の「類別トリック集成」の密室トリックにおける分類を踏襲しています。
(1)犯行時、犯人が室内にいなかったもの。
(2)犯行時、犯人が室内にいたもの。
(3)犯行時、被害者が室内にいなかったもの。
(4)密室脱出トリック。
という有名な四つの分け方です。
密室をイメージ的に捉えると……

(ある時点Tにおいて)
      ____
     |     |
     |   A |
     |     |  B
       ̄ ̄ ̄ ̄       C

                                       D

下手ですみません。四角いのが部屋で中にAさんの死体があると思ってください。密室に時間の要素がないかというとまったくそんなことはなく、永遠に密室である密室はありません。密室には密室になるときと密室が破られるときがあって時間が限定されています。
BさんとCさんは密室の外にいるので犯行は不可能です。この二人にはアリバイは成立していないとします。
Dさんが離れた場所にいます。彼にはアリバイが成立していることにします。Dさんはある時刻Tに、上図のDの位置にいたことが立証されているから、Aさんの死亡推定時刻までには犯行現場に間に合わない。
つまりDさんとBCさんを隔てる見えない壁があることになります。これを「時間の壁」と呼びましょう。
この時間の壁は、犯行時刻から時間的に遠のくにつれ、空間的に広がっていきます。
たとえばAさんが夜の9時に殺されたとします。そうするとDさんが8時30分にDの位置にいたとすれば、アリバイは成立します(30分間でA地点に到達できないとします)。ところがDさんが昼の1時にDの位置にいたということしか証明できなかったら、アリバイは成立しないでしょう。A地点に夜の9時に到達するには十分に間に合うからです。昼の1時の時点の時間の壁は広がり、D地点は時間の壁の内側にあることになります。昼の1時にDさんがもっと遠くに(時間の壁の外に)いたことを証明できれば、アリバイは成立するでしょう。
つまりアリバイとはある時点で時間の壁の外にいたという証明なのです。言い換えれば、どんな殺人も時間の壁に囲まれた密室殺人なのです。(僕の説明で分からない人は『キマイラの新しい城』98ページの図を参照してください。)
上の図では、ある時点TのBさんCさんDさんの位置を示していますが、DさんとBCさんの間に見えない壁があると思ってください。
なぜこんな小難しいことを考えているかというと、密室トリックをアリバイトリックに変換するのに必要だからです。Dがある時点TでD地点にいたというアリバイをもっていたとします。つまり時点Tでは時間の壁で囲まれる空間はDを含まない程度に小さいのです。彼が犯人であるならば、この越えられないはずの時間の壁を越えて、犯行を行ったことになります。
ここで、乱歩の4つの分類を、アリバイの分類に変換してみましょう!
(1)T時、犯人が「時間の壁」内にいなかったもの。
(2)T時、犯人が「時間の壁」内にいたもの。
(3)T時、被害者が「時間の壁」内にいなかったもの。
(4)「時間の壁」突破トリック。
疲れたので続きはまた。

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April 25, 2005

アリバイ∽密室

密室とアリバイはともに時空間に関するトリックであり、本質的には同じものであります。

密室とアリバイは同じものですから、トリックには互換性があります。


                  ~殊能将之『キマイラの新しい城』~

有栖川有栖さんに『マジックミラー』という作品があってその中に「アリバイ講義」の一節がある。
アリバイだとか密室だとかは要するに不可能を可能にすることだから、そもそも方法は限られている。だからトリックの分類や整理が可能になる。そんなことをしても意味がないと多くの人は言うかもしれないが、意味があるからやるのではなく愉しいからやるのだ。それにミステリを書こうとする人間にとっては、分類整理していくうちにアイデアが出てくることがあるので、まんざら無意味なことでもない。
なので、『マジックミラー』中の「アリバイ講義」を「密室講義」に変換する、という作業をやってみたい。最も完成した「アリバイ講義」は現時点では上記のものだと思う。
もちろん逆のこともやってみるつもりだ。「密室講義」は優れた着眼のものがたくさんあるが、この場合は、トリックが具体的に書かれているものが望ましいので、僕が以前作ったものを使う。
できたらここに書くかもしれない。あるいは書かないかもしれない。

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April 16, 2005

ロマンチシズム

ロマンチシズムとは何だろうと考える。
それは物事を実際以上のものと捉えることだ。
日常を神話にしたり、意味のないところに意味を見出したりする。あるいは美しくないものを美しく感じ、卑賤なことを高尚に感じる。筋のない日常を物語と観ずる。
これがロマンチシズムだ。無味乾燥な認識を歪め、物事を不正確に(実際以上に)認識することがロマンスだ。我々にはそういうものが必要だと思う。認識を歪め、実際以上のものを見せてくれるきっかけが必要だと思う。それが芸術だ。芸術は現実を写すゆがんだ鏡かもしれない。だがそれでいいのだ。

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