January 22, 2006

東野圭吾『容疑者Xの献身』

容疑者Xの献身容疑者Xの献身
東野 圭吾

文藝春秋 2005-08-25
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読みました。
面白かったです。たいへん素晴らしいミステリと思います。
トリックは分かりやすかったですね。倒叙モノに慣れている人ほど気づきやすいのかな。
トリックに気づくか気づかないかで感動の度合いが違うかもしれない。そんな作品です。
僕が特に気に入ったのは19章目ですね。最終章で書くべきことをきちんと書き、良い終わり方をさせる。さすがだなと思いました。(←ん? 偉そう)
とても完成度の高い、傑作ですね。

結局、石神が花岡母娘に抱いていた感情は、恋愛感情ではなかった、ということですよね。いや「崇高すぎる恋愛感情」といっても良いかな。決してどちらか一方にではなく、母娘に対する感情ですよね。僕はそういうふうに捉えたからこそ、無私の献身が納得できました。

あう。上のように書きましたが、パラパラとめくってみると、やはり石神は花岡靖子に対して恋愛感情を持っているようですね。しかしそうなると納得できないなあ……。
一方的に恋愛感情を抱いているだけで、自分を犠牲にしてまで相手を救えるか。そこまで深く愛すことができるのか。これが恋人同士、夫婦ならまだわかる。お互いに愛し合っているのなら。

あーー、僕はバカだ。花岡母娘に対する崇高な感情+靖子に対する恋愛感情、この両者が合わさって石神の中にあった。そうだとすると、納得できますね。というかそうとしか読めませんね。

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September 29, 2005

サン=テグジュペリ『星の王子さま』とルイス・キャロル『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』

を読んだ。
『星の王子さま』は、中学のとき、いちど読んでいた。けっこう内容を忘れていた。
キツネがいいことを言っているのに気がついた。
平行して『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』も読んだ。
どっちも初読。たいへん面白かった。
『星の王子さま』は教訓的なお話だけれど、『アリス』は論理の楽しさを追求したお話。『星の王子さま』は「泣ける」が『アリス』は「笑える」。対照的だ。

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September 16, 2005

ナーゲル&ニューマン『ゲーデルは何を証明したか』と「悪魔の星」

を読んだ。
非常に分かりやすかった。ゲーデルの不完全性定理に興味がある人に強くお勧めしたい。
かなり簡略化された形だと思うが、証明のあらすじを追ってあって、それがまた分かりやすかった。驚異的なくらい分かりやすい。
数式は極端に少なく、文章で丁寧に説明してあるので、僕のような、数学の素養がない文系人間にも理解できた。

パズルコレクション2号を買った。今回は「悪魔の星」。
組み立てるのが難しい……らしいのだが、そんなに難しくないじゃん。5分くらいで分かったよ。うーん。これで1000円かあ。

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September 11, 2005

佐々木俊介『繭の夏』

4488433014繭の夏
佐々木 俊介

東京創元社 2001-06
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繭の夏
繭の夏
posted with 簡単リンクくん at 2005. 9.11
佐々木 俊介著
東京創元社 (2001.6)
通常2??3日以内に発送します。

を読んだ。
面白かった。
捜査をしていくうちに、徐々に過去の事件の全貌が明らかになっていく。その過程が非常に巧みだと感じた。
しかし、ややみんな探偵ごっこに協力的過ぎる気もする。
僕は読書感想を書くのがあまり上手でなく、とくにその作品の面白さを伝えるとなるとぜんぜんできない。なので、ネタバレで書きます。未読の方は読まないように。
アンテナで伏せ字が見えないように、スペースを開けます。












(ネタバレ)ネットで感想を巡ってみた(疲れた)。「後味が悪い」という意見が多く、僕もそう感じたのだが、それがどこから来るのか考えてみた。もともと夕季の死は他殺かもしれないという疑惑があったのだから、単に殺されたという事実が後味を悪くしているのではない。その犯人がある人物だったということも、もともと考えられていたことだ。動機の異常さは後味の悪さには繋がらないだろう。後味の悪さは、明らかに、終章における藤森咲江のルサンチマン感情の爆発から来ている。「……突然何を言い出すんだって思ってるでしょうね。」から始まる彼女の長いセリフだ。藤森咲江は自分の容貌にコンプレックスを感じるあまり、友達づきあいしていた水島悦子を大嫌いだったと言う。咲江は周囲の人間から「優しい」人間だと思われていた。とくに祥子と敬太郎は咲江を非常に慕っていた。ところが、「優しい・思いやりがある・控え目」という評価を、彼女がねじけたやり方で受け止めいていた――自分の「醜さ」に対する差別的・同情的な態度だと受け取っていたことが、この長いセリフからわかる。さらに藤森咲江は、犯人を脅迫し、関係を持つことで、悦子に対する優越感を得たいと言い出す。かなり醜い考え方だ。これが非常に後味を悪くしている。天使のような心を持っていたはずの人が、実は、陰湿なルサンチマンを胸に抱えていたことが分かってしまう。祥子や敬太郎はきっと裏切られたような気がしただろう。読者もきっと裏切られた感じがすると思う。
ところが、このシーンは、祥子か敬太郎かの、夢の中の出来事と捉えるべきだと僕は考える。いわゆる本当の、地の文ではない。ある人物は、何らかの告白をしただろう。その話を「あまりにも辛すぎる真実」と彼らが捉えたことは事実だが、それが具体的にどんなものだったかは書かれていない。つまり夢の中のシーンには、幾分かの誇張が含まれているかもしれないのだ。なにしろ夢だから。また、ある人物が本当に真実を語った、という保障は、実のところ何もない。実際、咲江を殺したのだが、罪を逃れる――というよりは告発を逃れるために、嘘をついたのかもしれないのだ。
もしかしたら誤解かもしれないが、そのように読むことができる。そう考えると、そんなに後味は悪くならない。

別の話だが、あるトリックには『模像』と通じるものを感じた。これはやっぱり著者が演劇に関わる人だからかな。(ここまで)

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September 06, 2005

麻耶雄嵩『神様ゲーム』

4062705761神様ゲーム
麻耶 雄嵩

講談社 2005-07-07
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神様ゲーム
神様ゲーム
posted with 簡単リンクくん at 2005. 9. 6
麻耶/雄嵩??著
講談社 (2005.7)
通常24時間以内に発送します。

を読んだ。
面白かった……ただ、もう少し、何かが物足りない気がしないでもない。ミステリ的な仕掛けのインパクトがやや弱いかな。物語的には、神様が登場したり、いろいろあったりで、インパクト十分なのだけれど。
ネタバレで語ります。完全ネタバレです。
(以下ネタバレ)最後は真相をはっきりと提示しない曖昧な終わり方をする。ネタバレ掲示板を見て、自分の考えをまとめてみた。
まず、ろうそくの炎が奇妙な飛び方をしたことから、それが事故などではなく、神様の天誅であることは間違いない。だから、鈴木は神様で、共犯者は「ぼく」の母親。「ぼく」の母親はどこに隠れていたか。物置には足跡がなかったから駄目。「ぼく」の母親は体が小さかったという表現があるので、おそらくたらいの中だ。
しかしそう考えるとなぜ物置に隠れなかったのかが分からない。物置に隠れるほうが安全だし、自然だと思うのだけれど……。
それに子供がやっと隠れられるたらいに「ぼく」の母親が隠れられるというのも釈然としない。それならば、もう少し明確な表現で具体的にどれくらい体が小さいか書いてよ、と思う。
(ここまで)
ジュヴナイルとしては文句なしに失格、ミステリとしてはまあ満足できる程度、エンタメ小説としてはダークな魅力があってかなりいい。
というわけでそれなりに満足できました。

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富永裕久『図解雑学 パラドクス』

4816336915図解雑学 パラドクス
富永 裕久

ナツメ社 2004-02
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パラドクス
パラドクス
posted with 簡単リンクくん at 2005. 9. 6
富永 裕久著
ナツメ社 (2004.3)
通常2??3日以内に発送します。

を読んだ。
パラドクス(paradox)はオーソドクス(orthodox)の対義語で、「逆説」を意味する。
「逆説」とは何かというと、この本によれば、
1、相互に矛盾する命題が、ともに帰結しうること。また、その命題。
2、直感的に正しく思えるが、実は誤りである論理。
3、直感的には誤りに思えるが、実は正しい論理。
だそうだ。
いろんなパラドクスが図を駆使して分かりやすく解説してある。
有名な「アキレスと亀のパラドクス」からカントールの集合論の話まで幅広く扱ってある。ミステリで逆説といえばチェスタトンだけれど、さすがにチェスタトンには触れていない。
パラドクスに興味がある人にお勧め。

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September 04, 2005

小阪修平『図解雑学 現代思想』

4816336826図解雑学 現代思想
小阪 修平

ナツメ社 2004-03
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現代思想
現代思想
posted with 簡単リンクくん at 2005. 9. 4
小阪 修平著
ナツメ社 (2004.4)
通常2??3日以内に発送します。

を読んだ。
難解な現代思想を平易な表現で分かりやすく解説してある。思想的な背景が分かるので、現代思想の潮流の必然性が把握できる。
「現象学的還元」「差異の体系」「同一性/差異」「構造主義」「テクスト」「エクリチュール」「リゾーム」「シミュラークル」「脱構築」「エピステーメ」「相互テクスト性」……などなどの、難解な哲学用語も、これを読めば、すんなり理解できるはず。
「どういう意味か分からんけれど、手っ取り早く知りたい!」という方にお勧めです。

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July 21, 2005

林泰広『The unseen 見えない精霊』

4334074669The unseen見えない精霊
林 泰広

光文社 2002-04
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The unseen見えない精霊
林 泰広
光文社 (2002.4)
通常1??3週間以内に発送します。

を読んだ。
不可能犯罪で大事なのは、マジックで言うところの「あらため」だ、と山口雅也氏が書いていたが、この作品は9割くらい「あらため」に費やされている。この「あらため」が非常にまわりくどい説明で、読んでいて余計混乱してしまう。もう少しスマートに不可能性を説明してほしかったなあと思った(「読者への質問状」ではシンプルに説明してある)。そうやって、ロジックをこねくり回すのがこの作品の魅力なのかもしれないけれど。
トリックは分かった。これしかないだろう、というものだったので。
飛行船のシステムが人工的なのが気になった。たとえば、30秒しか明かりがつかないとか、一方からしか開けられないドアとか、そんなもの本当にあるのかなあ、という気がした。村人たちが嘘を見抜ける、というのは、設定としてなかなかおもしろいと思う。
活字で表現されたマジックショーというべき作品。マジックが好きな人、不可能犯罪が好きな人は楽しめるのではないか。

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July 18, 2005

エド・マクベイン『殺意の楔』

4150707596殺意の楔
エド・マクベイン 井上 一夫

早川書房 2000
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殺意の楔
殺意の楔
posted with 簡単リンクくん at 2005. 7.18
井上 一夫 / McBain Ed
早川書房 (1979)
通常2??3日以内に発送します。

を読んだ。追悼として。
マクベイン初挑戦。
ニトログリセリンの小瓶と拳銃を持った女が87分署の刑事部屋を占拠した。女はキャレラを逆恨みしていて、キャレラを殺すために来たと言うのだ。一方、キャレラは不可解な密室殺人を調査していた。
サスペンスと謎解きが同時進行で進むのだけれど、やっぱり謎解きは薄味。密室トリックの着想はおもしろい。しかし危険性が高いと思うので、そこの部分をもっとうまく処理してあれば良かったのに、と感じた。
終わり方は、なかなか良い。ネタバレキャレラののほほんぶり、小瓶の中身が判明するところここまで。
すこしドラマっぽいというか、ハリウッド映画っぽい通俗味があるものの、気楽に読むにはたいへん楽しい本だと思う。(199ページから203ページまでの一節が気に入った。)

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July 08, 2005

北村薫『ニッポン硬貨の謎』

ニッポン硬貨の謎
4488023827北村 薫

東京創元社 2005-06-30
売り上げランキング : 3,444

おすすめ平均 star
star巨匠クイーンへの敬愛の念がひしひしと伝わってきます
starパスティーシュの新たな傑作

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を読んだ。
最初の数節は鳥肌が立つ。まさにクイーンが書いたとしか思われない文体に、名文、名言のオンパレード。ここを書くときには、北村氏に「神」(クイーンのこと)が降りていたに違いない。とくに犯人が最初に登場する一節などは神がかりな見事さである。しかもその流麗なる文章のかげに伏線がきちんと仕込んである。
中盤の圧巻は、「シャム双子」論。クイーンはこういうことをやる作家なのだ。なにしろ二人二役までやった作家なのだから。挿話として捉えてしまいそうなこのシーンも実は伏線なのだ。
≪魔法の言葉≫にまつわるクイーンの推理は、本格ミステリのそれとしか言いようがない。≪魔法の言葉≫によって「ありえないこと」が起きる。一瞬、虚構が現実になったかと錯覚してしまうようなことだ。つまり≪魔法の言葉≫がおもしろい現象を生む、というそのことが、「本格」だ、と感じさせる部分なのだ。これも一種の謎と解決の妙と言っていいんじゃないか。
そして見逃してはならないのは一種の叙述(?)トリックだ。これも上の部分と密接に関わってくるのだが、読者はそこで騙されるからこそ、クイーンの上の推理にハッとすることができるのだ。
犯人の動機は「天上の論理」が支配した奇妙なものだった。これについては僕が後期クイーンをほとんど読んでいないので、あまり言及しないほうがいいかもしれない。「訳注」を読んでみると、こういうタイプのものが後期クイーンには多いのかな。
これまで書かれたクイーンのパスティーシュの中で最高級の作品であることは間違いない。クイーンファンは必読だー!

クイーン論の続きを読みたいなぁ。

表紙の50円玉には日本地図と本格おじさん、裏表紙の50円玉にはダネイとリーが隠れている。どれも昭和52年製なのは、ダネイが来日したのがその年だからだろう。

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