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September 11, 2005

佐々木俊介『繭の夏』

4488433014繭の夏
佐々木 俊介

東京創元社 2001-06
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繭の夏
繭の夏
posted with 簡単リンクくん at 2005. 9.11
佐々木 俊介著
東京創元社 (2001.6)
通常2??3日以内に発送します。

を読んだ。
面白かった。
捜査をしていくうちに、徐々に過去の事件の全貌が明らかになっていく。その過程が非常に巧みだと感じた。
しかし、ややみんな探偵ごっこに協力的過ぎる気もする。
僕は読書感想を書くのがあまり上手でなく、とくにその作品の面白さを伝えるとなるとぜんぜんできない。なので、ネタバレで書きます。未読の方は読まないように。
アンテナで伏せ字が見えないように、スペースを開けます。












(ネタバレ)ネットで感想を巡ってみた(疲れた)。「後味が悪い」という意見が多く、僕もそう感じたのだが、それがどこから来るのか考えてみた。もともと夕季の死は他殺かもしれないという疑惑があったのだから、単に殺されたという事実が後味を悪くしているのではない。その犯人がある人物だったということも、もともと考えられていたことだ。動機の異常さは後味の悪さには繋がらないだろう。後味の悪さは、明らかに、終章における藤森咲江のルサンチマン感情の爆発から来ている。「……突然何を言い出すんだって思ってるでしょうね。」から始まる彼女の長いセリフだ。藤森咲江は自分の容貌にコンプレックスを感じるあまり、友達づきあいしていた水島悦子を大嫌いだったと言う。咲江は周囲の人間から「優しい」人間だと思われていた。とくに祥子と敬太郎は咲江を非常に慕っていた。ところが、「優しい・思いやりがある・控え目」という評価を、彼女がねじけたやり方で受け止めいていた――自分の「醜さ」に対する差別的・同情的な態度だと受け取っていたことが、この長いセリフからわかる。さらに藤森咲江は、犯人を脅迫し、関係を持つことで、悦子に対する優越感を得たいと言い出す。かなり醜い考え方だ。これが非常に後味を悪くしている。天使のような心を持っていたはずの人が、実は、陰湿なルサンチマンを胸に抱えていたことが分かってしまう。祥子や敬太郎はきっと裏切られたような気がしただろう。読者もきっと裏切られた感じがすると思う。
ところが、このシーンは、祥子か敬太郎かの、夢の中の出来事と捉えるべきだと僕は考える。いわゆる本当の、地の文ではない。ある人物は、何らかの告白をしただろう。その話を「あまりにも辛すぎる真実」と彼らが捉えたことは事実だが、それが具体的にどんなものだったかは書かれていない。つまり夢の中のシーンには、幾分かの誇張が含まれているかもしれないのだ。なにしろ夢だから。また、ある人物が本当に真実を語った、という保障は、実のところ何もない。実際、咲江を殺したのだが、罪を逃れる――というよりは告発を逃れるために、嘘をついたのかもしれないのだ。
もしかしたら誤解かもしれないが、そのように読むことができる。そう考えると、そんなに後味は悪くならない。

別の話だが、あるトリックには『模像』と通じるものを感じた。これはやっぱり著者が演劇に関わる人だからかな。(ここまで)

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本家サイトでは、ややもすると芝居や音楽の話ばかり書いていましたが、こちらでは頑張ってミステリのことも語ってみようと思います。頑張らないと語れないというのもどうかと思いますけど。 さて、いまさらですがお題は『繭の夏』です。 皆さん大概ご存じないと思います……といいつつ、未読の方にはこの先の話も意味不明なので非常に申し訳ないのですが……とにかく、その昔、『繭の夏』といって、まったく売れず、まったく話題にもならなかった、とっても不憫なミステリ小説がありまして、十年前に僕が書いたその作品、下手も下手... [Read More]

Tracked on September 12, 2005 09:06 PM

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