« 自信ない… | Main | やばいやばいよー(出川風)(BlogPet) »

July 01, 2005

サワリだけ先行公開

してみる。たぶんしちゃいけないことはないだろうから。


 灘は「和泉兄妹の部屋を見てくる」と立ち上がりながら言った。
 英実がついていこうとすると、灘は「いや、いいんだ。少し見てくるだけだから」と言い残して、食堂から出て行った。
 灘が階段を上るギシギシという音が聞こえてきた。英実はマグカップの中のコーヒーを見つめた。黒い液面に自分の顔が映っていた。疲れきった表情だ。あまりにいろいろなことが起こりすぎた……。英実はめまぐるしく様々なことが起こった昨夜の出来事を振り返ってみた。
 はじまりは、英実が手を滑らせて、側溝にタイヤを落としたことだった。「そこに美里の作為があったのではないかと疑っている」と英実は灘に話した。だが、本当は英実にも、よくわからないのだ。英実は、そのときの状況を頭の中で注意深く再現してみた。それは美里のせいだったようにも思えるし、単純に自分だけのミスだったようにも思える。
 それから、何が起こっただろう。雪かきをしていた英実と正雪がブーツを見つけたのだ。周囲の雪が赤く染まっていた。
 死体はなく悪戯だったと灘は言った。血痕のように見えたものはペンキだった。それで皆はいちおう納得した。
 ブーツのことはのちにふたたび問題になった。美里が「うさぎの耳」みたいに「真っ赤なブーツ」が雪から飛び出ていたのを見たと言ったのだ。美里の部屋からは紫のブーツがあった場所は死角になって見えなかった。ブーツは2組あったということだろうか? だとしたら、なぜそんなものが雪に突き立ててあったのか?
 ブーツと言えば、雪崩のあとにも、窓からブーツが見えた。どういうことだろう? 英実の頭は混乱するばかりだった。
 そして首を切られたオーナーの死体。英実は恐ろしさに身震いした。
 いちばん訳がわからないのは、皆が次々といなくなっていることだ。まるで異空間に飲み込まれたように忽然と消えてしまった。最初に消えたのは白河だった。次が美里。そして曽我部裕子夫人。和泉兄妹。残されたのは、灘と英実のたった二人になってしまった。
 そして……ああ、そうだ。あの奇妙な絵。あの、稚拙なだけに、なにかとても不気味なものを感じさせる絵。英実はあの絵のことを考えたくなかった。あの絵が英実の眠っている記憶をゆすぶり起こそうとするのだ。封印しておきたい記憶を……。
 英実は遠い記憶を探っていた。いつしか眠りに落ちた。


 ふと気づくと、食堂には英実一人だった。灘はまだ調査しているのだろうか。
 英実は灘を探すために二階に上がった。和泉兄妹の部屋を覗くと、案に相違して誰もいなかった。二階のすべての部屋を見て回ったが、灘の姿はどこにもない。英実はペンションを隈なく探してみた。灘も消えてしまったらしい。
 ついに独りになった、と英実は思った。
 他の人々は何の痕跡も残さずに消えてしまったが、唯一例外があることに、英実は気づいた。どのようにしてこの世からいなくなったにせよ、死体を残したのは、このペンションのオーナーだけだ。英実はオーナーの死体をもう一度見てみようと思った。いまさら謎を解こうとは思わなかった。ただ、じっとしていると、そのまま自分の体が消えてしまうのではないかと思ったのだ。
 英実は裏口から出た。昨夜の吹雪が嘘のように、外は静かだった。英実は懐中電灯であたりを照らしながら、雪を踏み分けて進んだ。
 オーナーの死体は幸い雪に埋もれていなかった。雪崩によって動いたためか、頭と胴体はやや離れた場所にあった。
 死体の胴体のほうに近づくにつれ、英実は違和感を感じた。1メートルくらいにまで近づくと、英実は驚きのあまり声を上げそうになった。


思わせぶりなところで切ってみました。
小説向きの普通の文章を書けないことが、いまの悩みです。
公開は7月7日らしいです。

|

« 自信ない… | Main | やばいやばいよー(出川風)(BlogPet) »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference サワリだけ先行公開:

« 自信ない… | Main | やばいやばいよー(出川風)(BlogPet) »