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May 31, 2005

『扉は閉ざされたまま』批評

密室が開かれないまま解決する(犯人を推理する)のがすごい、という評価があるらしい。
しかし窓から覗いて密室の中を見ているわけだし、犯人を推理した手がかりはその部屋の中の手がかりだ。
どうせ密室を破らないままで終わらせるという設定にするのなら、窓から覗かせるなよ、と言いたい。完全に現場を見ずに推理させたほうがずっといい。いちばんやりたいアイデアで、徹底したところがなく、妥協しているのがダメなのだ。
それに現場を見ずに伝聞だけで推理するなんて、ざらにある。安楽椅子探偵だ。作者は「安楽椅子探偵」のことを忘れていたのだろうか? 自分は前代未聞のすごいことをやっていると思っていたのだろうか? 
手がかりが少ないことを褒めている人もある。しかし手がかりなんて少なくて当たり前。ロジックものはたいてい少ない手がかりから推理する。(この作品の「ロジック」は推測だが。)書いてみればわかるが手がかりが少ないミステリを書くのは容易なことなのだ。要はその手がかりからどのくらい面白い推理が出てくるか、どれほど確実なロジックが出てくるかなのだ。この作品にはつまらない憶測・推測しかない。
たとえば、(ネタバレ)ぜんぜん「チェックメイト」ではない最後の推理は、曖昧すぎるつまらない推理で殺人ではないかと疑い、犯人が密室にした理由を憶測し、そこから犯人の動機を憶測している。憶測だらけだ。憶測に基づく推測だ。チェックメイトどころか逃げ場だらけだ。犯人が密室にしたのは単に殺人の可能性を排除するためだったら? 隠れた動機があったら? この程度が倒叙ものの解決編だろうか?(ここまで)
作者はおそらくレトリカルで曖昧な(言葉でごまかす)ロジックを、単純で自明なロジックよりも上においているのだろう。実際は単純で自明なロジックのほうが作るのは困難なのだ。なぜなら誤魔化しが入る余地がないから。読者に気づかれないで、なおかつ決定的な「証拠」でなければならないから。はっきり言ってコロンボのほうが格上だろう。倒叙の基本がまったくなっていない。
いままで読んだミステリの中でワースト1だ。

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