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April 07, 2005

夏目漱石『硝子戸の中』


を読んだ。
解説は石原千秋。最近出た『漱石と三人の読者』の著者の人。
この解説にいろいろ啓発された。「読む」ということは難しいことだなと思う。
漱石はこの作品で「他人の心」に悩む。言葉が直接心を伝えないことに悩む。世間一般の人々と漱石に齟齬が生じるのは、漱石が「人の「心」に直接触れたいと思っていた」(解説より)からだろう。「正直に」「社交を離れて看破し合う」世間を要求していたのだ。しかしそれがないものだから、人を容易に信じられず、硝子戸の中から世間を諦観視する、ということになる。
しかし最後の一節で漱石は「微笑」する。連載した『硝子戸の中』にも自分は「もっと卑しい所、もっと悪い所、もっと面目を失するような自分の欠点を、つい発表しずにしまった」。要するに自分も、直接心を伝えるまでは、行っていなかった。それで「自分を軽蔑」し、「微笑」するのだろう。他人も「微笑」して眺められるようになる。硝子戸を開けるのは、そのためだろう。「本当の事実は人間の力で叙述出来る筈がない」からだ。言葉と心の問題に、少し日が差したわけだ。

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