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April 26, 2005

芦辺拓『紅楼夢の殺人』

を読んだ。
自作で書こうと思っていたネタとかぶってしまって、ショックで読んだ直後はまともに評価できなかった。被害妄想っぽくなったりした。しかし時間が経ち、あとがきと解説とインタビューを読んで落ち着いたので、いまならこの作品を正当に評価できると思う(それによく考えたらそんなにかぶっていなかった)。
一言でいえば大傑作だ。
いくつもの不可解な事件が起こるが、個々のトリックは小技だ。しかしこの作品の場合は、トリックは小技でなければならないと思う。この作品のキモはトリックにあるのではない。不可能犯罪が起きた理由と、全体の構造の奇想天外さにある。しかも真相は奇想であるばかりでなく、十分な説得力を持つ。
終わり方も美しい。そして(きっと僕の誤読だが)本格ミステリのメタファーにもなっている。紅楼夢は儚い夢として散ってしまう。それはすべての物語が持つ宿命のようなものだ。物語は終わらなければならない。
本格ミステリとは砂上の楼閣のようなものだと思う。本格ミステリには虚しさがつきものだ。それは、ラストで円環が閉じるからだ。謎が解かれ、真相が語られる。すべてはいくつかのアイデアのために語られたように思う。「なーんだ」という人もいるかもしれない。だが、それでも、本格ミステリは一夜の夢として貴いのだ。謎と解明の物語は美しいのだ。「満紙 荒唐の言(すべてでたらめのものがたり)」だとしても、だ。

ということを熱く語ってしまいたくなるほど、面白かった。

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