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April 05, 2005

国名シリーズの装画

ネタがないので、bk1に投稿した書評をコピペする。『スペイン岬の謎』の書評。

通称スペイン岬でジゴロが殺された。全裸にケープ一枚という格好で。なぜ犯人は被害者の服を脱がせたのか?

タイトルのCapeは岬とケープをかけたものだ。『フランス白粉の謎』のPowderと『チャイナ橙の謎』のChinese Orangeも、それとなく二重の意味を持たせている。

『エラリー・クイーンPerfect Guide』にはアメリカで当時出版されたときの書影が載っているが、注意して見てみると面白いことが分かる。

国名シリーズは『国名+もの+の謎』とタイトルが統一してあるのだが、書影には、トランプのダイヤのクイーンをバックにして、その『もの』に当たるものが描かれている。『ローマ帽子』には帽子、『オランダ靴』には靴、『ギリシア棺』には棺、『エジプト十字架』には十字架、『アメリカ銃』には銃、『シャム双子』には(これはそのまま)シャム双子、というふうにだ。

ところが上にあげた『フランス白粉』と『チャイナ橙』と『スペイン岬』だけは、そのパターンをはずしている。なぜか? もちろん二つのものを同時に指すことを暗示しているのだ。

『フランス白粉』でダイヤのクイーンをバックに描かれているのは(自信がないが)ブックスタンドだと思う。『チャイナ橙』には、鏡に写した橙色のダイヤのクイーンが描かれている。これは作品のテーマが「あべこべ」だということを示している。この二つの作品では、タイトルや装画さえも、一種のトリックであり、同時に手がかりなのだ。

『スペイン岬』の書影は、ケープをまとった全裸のジゴロの死体である。この作品の場合は、Capeがはやばやと岬とケープの二つを意味すると分かってしまうから、二つの意味を隠す必要がなかったのだろう。ダイヤのクイーンがなくなっている理由はなぜか分からない。

書影のことはこれくらいにしておく。

本書『スペイン岬の謎』は、クイーンらしい、論理でガッチリ固めた本格ミステリである。勘のいい読者なら思いつきで犯人が分かってしまうかもしれない。ネットで感想を見ても、これは分かったという人が多い。僕は分からなかったが……。

しかし、直感で分かることを、あくまで論理によって緻密に推理しようとする作者クイーンの姿勢は、首尾一貫して自分のスタンスを守ろうとするようで好ましい。

装画にまで細かく気を配ってフェアプレイに徹した作者に思わず脱帽したくなる。

クイーンはこういうことをやるから、僕は好きなのだ。
他にも、二人二役というミステリでもやらないことを、現実世界でもやっている。そこがすごい。

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